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  • 起業をゲット。

道端のピーナツ売りや総菜の軒先販売も、大きなビジネスになるチャンスがやってくるかもしれない。

 

フィリピン、草の根の女性たちの場合である。
「起業リスト50」に紹介した女性たちのプロフィールは、おおよそこのようになる。
まず、年代では20〜60代と幅広いが、中心は30〜40代。半数以上が結婚し、夫や子供と生活しているが、別居は4人。カソリックの国で離婚は難しいために選んだ道といえる。DV(家庭内暴力)の被害を自ら語った人も2人いた。
学歴は、家庭の経済的事情で小学校を断念した人から大卒まで、さまざま。
前職が公務員や会社員で、比較的安定した仕事にみえても、あえて転職して起業を選んだのは13人と多い。時間の自由がきく、在宅でできるなど仕事と家庭の両立を求めた結果だ。

海外労働の経験者は50人の中では8人。開業資金を貯えるには海外労働という方法もあるが、必ずしもうまくいっていない。貯えのほとんどが生活費に消え、また仕事を求めて海外へ、と繰り返されるケースも多いのだ。
国民の10人に1人、800万人以上が海外で働く現状のなかで、安直に海外労働に頼ることに対するけん制の動きもある。一方で、その仕送り金つまり稼いだ分の有効活用、持続的な使途がさかんに議論されるようにもなった。

では、どんな起業をしているのだろうか。業種をみてみると、大きく分けて食品関係の3割に対し、非食品は7割に達した。開業のしやすさ、元手などを考えると食品の方が多いのでは…という予想とは反対だった。

非食品ではアクセサリー、洋服、置物など小物グッズが多い。しかし、この手の製品はすでに大小メーカー、中国製なども含めて、製品が巷にあふれかえっているのに。だが、マーケットはクリスマス、イースターなどの贈り物シーズン期にあちこちで開催されるバザーやフェア。どんなものでも、と言っては失礼かもしれないが、巨大な需要に吸い込まれていく。実際、このシーズンを狙って開業して成功、少なくとも1年目を乗り越えたという話はよく聞いた。

食品でも同様の“シーズン景気”はある。さらに、興味深いのは、自宅で家族用に作る総菜やおやつ、といってもかなりシンプルなものだが、それを少し多めにして、近所に分けているうちに口コミで広がって、ビジネスとなったという例もあとをたたないことだ。草の根である。いろいろな物を吸収できる大小、零細なマーケットが身近にあるということだから、起業もあまり難しいことをいわず、まずはゲットである。その点はすごい、たくましいと思う。

 

ごみ山から拾ってきたおもちゃで遊ぶ子供たち。船の中ですやすや眠る赤ちゃん。南国の日差しや潮風に育てられていくのだろう。

 

開業資金は100P〜15万P(1P・ヘ゜ソ≒2.5円)、つまりいくらでもあるし、ゼロからの出発もある。すでにあるものを売って小銭を稼いでいきながらのスタート。マイクロクレッジト・プログラムなどをうまく活用して段階的に成長していった起業はやはり強い。10万Pを超える場合では、店舗兼自宅の購入などを早々と行い、ファミリー型ビジネスとして歩み始めている。業種にもよるが、よくいわれるように、やはり起業は小さく始めて大きく育てる。開業に5000〜7000P、約1ヶ月分の給料くらいの額が工面できたら、スタート・アップしてもいいかかもしれない。

全員が、公的、民間を問わず何らかの支援を受けたのが起業のきっかけになっているか、または自分で始めたビジネスのさらなる向上につながっていることもわかる。支援のなかみでは技能訓練が最多。そもそもこのリストがそのような技能訓練・起業支援の強化を図ったプロジェクトの成果物を基にしているので、当然であるとしても、やはり訓練である。

技能訓練に加えて、海外帰国者支援団体や地方振興支援などのマイクロクレジット・サービスなどを受け、起業に成功した例をみると、きちんとした具体の支援策あるいは開発援助が女性の起業を促進するのに、功を奏するのは確かだ。あとはこのような起業の継続支援の仕組みがほしい。

さらに、見落としてはならないのは、“非技能”訓練の大切さである。たとえば男女平等、リーダーシップなどのワークショップを並行して受けることによって、自信がついた、ビジネスへの考え方が広くなった、積極的な考え方・態度になった、夫と一緒に仕事も家事もやるようになった等など、女性たちをかなりエンパワー(潜在的力の発揮を促す)しているのである。もちろん男性たちもである。

だが、自分のためよりも家族のために、身を粉にして働く女性たちが多いのも確かだ。それが強い動機、大きな原動力になっている。家族や親戚縁者の助け合いが薄れた社会では想像しがたい部分もあり、けなげである反面、家庭内福祉にもたれて制度、政策の対応が後手になっていないかと心配になる。政治を怠慢にさせてはいけない。

 

大学進学をめざす高校生(15〜17歳)たち、就きたい仕事は看護士、コンピューターエンジニア、マスコミなど。
苦学して公立大学に入った長女は、ドライバーの父を助け、幼い妹たちのためにも早く働きたいという。

 

 

起業への動機や原動力は、地域にも向けられている点を最後に紹介しておきたい。コミュニティ型ビジネス、社会的起業とみられるものが9件あったのである。
自治体や関係機関、地元の政治家などと対等な連携をとりながら、なおかつ自分や家族のためだけでなく、地域の伝統・特産品の掘り起こし、環境問題、女性の収入向上などに取り組んでいる起業である。その成長と広がりは今後、かなり期待できると思われる。


*詳細は「起業リスト50〜フィリピンの女性たちの場合」参照。

 

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発信:おおつかともこ

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