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マニラE通信5号
11 月14日

 

クリスマス・ランタン作り

 

 クリスマスにランタン(ちょうちん)は欠かせません。星型を基本形にして、ふたつの星を重ねて少々、角度をずらした 10 角形のもの、丸く縁取りしたもの、それらをいくつも並べて大きな円形にしたものなど、大小さまざまなものがあります。星はキリスト誕生の道案内となる「ベツレヘムの星」をあらわしています。数本の線を付けているのは、もちろん流れ星の、あの流れていく動線です。この流れ星スタイルはランタンだけでなくビニール製などのデコレーション用のものがいろいろ出回っていて、ビルの入り口や門などにはアーチ型にしてたくさん吊るされますが、この場合は流れ星の線にあたるひらひらが、星の下から垂れ下がっていて、七夕の飾りのようでもあります。それを見ていると時々、なぜか天日干しで吊るされている大きな烏賊を思い出すことがあって、おかしくなります。

 このクリスマス・ランタン、こちらでは“パロール”といっていますが、語源はスペイン語で明かりを意味する“ファロール”とのこと。もともとは 14 世紀のイタリアに端を発し、スペイン、メキシコを経て、スペインによる植民地支配が始まった 16 世紀にカトリシズムの布教とともに、この地にクリスマス・ランタンの風習が伝わったといいます。国民の 80 %を超えるカトリック信者のいるフィリピンの宗教的な行事をみていると、この東南アジアのトロピカルな島国とヨーロッパの西方の国との歴史的な関わりがいまも随所に残されているのがわかります。

 

クリスマス・ランタンの値段は大きさ、デザインの懲りようにもよるが、直径 50 センチのものが 800 ペソから。産地とマニラ市内では価格に 2〜2.5 倍の差があります。

 

 ランタンの生産地として有名なサンフェルナンドの街は、マニラから車で 1 時間半ほど。ピナツボ火山の噴火( 1991 年)の被災地でもありました。郊外に出るといまだに屋根だけ残して火山灰や泥流に埋もれた民家や、 2 階部分が道路と同じ高さになった教会などが残っています。
  ランタン作り 12 年というレンゾ・リガットさんはいま 24 歳といいますから、小学校を出るころから見習いで店に修行に来ていたようです。ランタンにも流行の波があり、彼の記憶では、作り始めたころは星型の枠組みは竹のヒゴ、その上に張り付けるのは日本の紙、和紙を使っていました。内部にロウソクを灯したので、日本の伝統的なちょうちんと同じです。 5,6 年毎にデザインが少しずつ変わっていき、そのうち現在のような、サイズが大きくて、派手で、長持ちするものが好まれるようになってきました。枠には針金やメタルを使い、張り付けにはちょっと高級なものでは天然貝(カピス貝)、一般的にはプラスティックを彩色して枠にかぶせ、内部に電球を取り付けます。点滅式で、それは美しい電飾になります。
 この仕事の繁忙期は 9 月ごろから。追い込みは 11 月になりますが、その時期は休みなしの仕事です。レンゾさんの仕事のペースは 1 日で枠を 5 組、 1 週間で 30 ほどを製作します。あとの電気系統の取り付けは別の人、そして販売をする店のオーナーと、数人の分業です。
 
給料は売り上げにかかっていますから、ランタン屋が道の両側に数十件もびっしりと並ぶ、この辺りでは、競争も激しく、お客さんの取り合いです。シーズン中の 9 月から翌 1 月までの平均月収は 7,500 ペソほど。残りの月は店番をしながら細々とつないでいるようです。
 
でも、「この仕事には満足している、売れない時は別だけど・・・」と言う彼の姿がとてもしっかりしていました。そしてさらに、収入の 3 分の 2 は家に仕送りし、「残りを自分の生活費にあてているんだ」、という彼に、思わず“えらいね”とつぶやいたわたし。「フィリピンではあたりまえよ」と、同行した友人がコメントしました。
 
このインタビューでは定番の質問ですが、ふたつの“もし・・・”を尋ねました。
もし、子どもがいたらどんな仕事をさせたい?「電気エンジニアがいいかな」。
もし、自分が転職するとして選ぶ仕事?「ジプニードライバー、親戚にいるから」。

  フィリピンの今後の成長産業のひとつといわれるのが、ホリデー・デコレーションとよばれるこのようなクリスマスツリーの飾りやろうそく、照明器具、イースターやハロイン・グッズそして関連ギフト製品などです。女性の小規模起業家たちもこの時期に狙いをつけて、手作りろうそく、ハーブせっけん、クリスマスカードなど得意の製品で商売に励みます。なかには市場を開拓して米国に輸出への道を開いた成功者もいます。ホリデー・デコレーションの輸出先は米国、日本、ドイツ、イギリスの順になっています。彼女たちの次の狙いは日本です。
  また、世界的市場からみれば中国製品が 60% と圧倒的なシェアで、続くフィリピン、台湾がいずれも 5% 弱です。昨年購入したクリスマス・デコレーションの小物をひとつずつ確かめてみると、やはり、ほとんどメイド・イン・チャイナでした。 
  これから、どこの街も競い合うようにクリスマス・イルミネーションが美しく耀く季節。今年は電気代の大幅な値上がりで、ランタンの明かりが心配されています。わたしの住まいでも小さなランタンのスイッチを夜、 3 時間だけ入れることにしています。

 

マンダルヨン市(メトロマニラ)のポリカルピオ通りは、はではでなクリスマス・デコレーションで有名。電気代を気にしないお金持ち もいる。

 

 


マニラのマカティはビジネス街であり、高級デパートやホテルが並ぶショッピング街。そのちょうど中心にあたるマカティ通りとアヤラ通りの交差する角にあるのがわたしのお気に入りの銅像、ガブリエラ・シラン( 1731 〜 1763 )。市内には祖国の英雄をたたえる銅像が目立つが、女性は女神像とこのガブリエラ像のほかには見ていない。馬にまたがり、剣を手に、長い髪をなびかせて、戦いに挑む勇ましい姿。夫のディエゴ・シランがスペインの圧制に抗して反乱を起こし、暗殺されたあと、反乱軍を率いて戦い、最後にスペイン軍に処刑された女性初の革命リーダーです。

 

 

 

発信:おおつかともこ

文・写真も)

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