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マニラE通信6号
12月18日

 

コールセンターで働く

 

この国で今一番注目されている仕事、そして IT 時代のチャンピオンのようにいわれている仕事。最近の報道によると 1 日 3 交代制で伸べ 4 万人が就労し、来年にはその数、 14 万人に達するという強気の数字も紹介されていました。それがコールセンター・スタッフ、つまり電話による英語でのサービス応対の仕事です。

勤務歴 3 年になるセリーン・サンタマリアさん (28 歳 ) に聞きました。
職名はコールセンター・エンジニアまたはエージェントと呼ばれています。
1 日の就業時間は残業も含めて 10 − 11 時間くらい。週 5 日の勤務。
月収は約 2 万 8000 ペソ。満足できる額です。このほかに、交通費、お米代(食費代)等諸手当が支給されます。
雇用先のコールセンターはエンジニア 56 人、この業界では中規模。
自分の収入で、両親ときょうだい 4 人の家族の生計を支えています。
長女として大学まで行かせてもらったのですから、いま、こうして家族の面倒をみるのは、至極当然なことです。

この仕事で満足しているのはやはり収入がいいから。不満な点はクリエイティブでないことです。来る日も来る日も電話の応対、それもすべて決められた手順でお客さんが満足したかたちで、終了させなければなりません。 1 件の持ち時間は 7 分、これ以上かかる場合は専門のテクニカルサポートにまわしますが、受けた電話の 7,8 割は自分のところで解決しなければなりません。 1 件毎の記録が求められ、厳しく勤務査定がおこなわれます。
前職は、日本の国際機関のプログラムコーディネーターでした。日本語も 1 年間しっかり勉強しました。それに比べたら、単調で創造的な仕事でないという不満は大いにあるけれど、収入とやりがいの両方をとることはできません。
家族のためにもどうしても収入の高い仕事がしたかったし、いまはお金のほうが大事と思ったから、転職にふみきりました。
子供がいたとして、させたい仕事はやはり高い収入を得ることを優先したほうがいいと考えています。国際的な体験も必要です。
もし、次の仕事を選ぶとしたら、前職のような、自分の日本語を活かした文化的な事業のコーディネートがいい。もし、お金があれば小さな学校を作りたい、というのも夢です。

こんなふうにインタビューに応えてくれたセリーンさん、会話ではほとんど英語を必要としなかったほど上手な日本語でした。この 12 月からは、これまでの実績が認められて、社内に 3 人いるエンジニアの監督責任者、スーパーバイザーのひとりに抜擢されました。「責任は重くなるけれど、仕事の幅は広がるし、収入も少し多くなるので嬉しい」、と着実な仕事観を示してくれました。

 

本屋でショッピングをしてきたセリーンさん、買い物は来年のカレンダー

 

コールセンターの仕事といえば・・・ 高給が取れる、都心の高層ビルにオフィスがある、時代の最先端で働くなどなど、若いインテリ層を中心にかなりの吸引力をもって人材が吸い込まれています。しかし、この仕事を巡っては就職者側と求人側の両方から“人材確保”の問題が提起されています。
就職者側、つまりそこで働く人たちは、セリーンさんの転職の動機にみごとに現れているように収入への魅力、これに尽きるようです。しかし、相手側(多くは米国)は電話サービスの応対は当然、自国内のコールセンターからと思っていますから、それを前提に、それになりきって応対することが絶対条件になっています。
スタッフ数 200 人を超えるような大手のコールセンターでは 24 時間、世界中からの電話サービスに応じます。たとえば商品への質問や苦情、請求書への質問、技術面のサポート。商品の宣伝販売、期限切れのクレジットカードの請求などもあります。いくら仕事とはいえ、プライドを傷つけられるようなことも少なくありません。たとえば、英語のアクセントがおかしい、国籍はどこだ、アメリカ人の振りをするな、などなど。それに耐えられるか、一種のマヒする状態(ネイティブスピーカーにはまってしまう?)になれるのか、わかりませんが、かなりの高いストレスがたまっていきそうです。このような業種、働く人たちが収入のためと割り切っているように、ゆくゆく、社会の経済基盤を担う人材が育っていくような仕事分野とは言いがたい側面もあります。
 
求人側も人材不足を嘆いています。最近言われているのが、フィリピン人の英語力の低下です。コールセンターへの応募者の就職率は 10 %以下ともいわれているほど難関で、その理由がネイティブスピーカー並みの会話力が必須とされるからです。最近、急速に台頭してきたこの業界、人件費、通信費の安いほうへと、安いほうへと動いています。最近ではインド、そして中国・大連、日本でいえば沖縄など。人材派遣会社などでは、国際競争力をつけるためには、完璧な英語が話せる人材育成が急務といっています。

アジアの中では英語がよく通用する国としてフィリピンの人たちは、なにかと有利に立つことが多いと思われます。その優位さをどのように活かしていくのか、他国のことながらとても気になる一面です。

 

新聞の別刷りで入ってくる求人特集の筆頭はコールセンター・エンジニアと呼ばれるスタッフの募集

 

 

 

シーフード三昧〜出張先のボホール島でごちそうになった昼食。
カニあり、エビあり、ラプラプ(フィリピンで一番ポピュラーな魚で 白身、淡白な味)の塩焼きに酢の物あり。そしてバナナの葉で 包んだ蒸しご飯、フレッシュマンゴとそろって、本当に豊かな 食材です。
 

 

 

 

 

 

 

発信:おおつかともこ

文・写真も)

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