バックナンバー

 

マニラE通信7号
12月29日

 

伝統の夜食といえば 

 

「バローッ、バローッ。」  
土曜日の深夜近いころ、街灯などほとんどない真っ暗な住宅街に響くのは犬の遠吠え、そして、フィリピン人の好物のひとつといわれるバロット売りの声でした。さっそく呼び止めて交渉の結果、週末の夜、稼ぎ時にもかかわらず、話しを聞かせてもらいました。
ちなみに、バロットとはアヒルの卵のこと。これだけではなんの珍しさもないのですが、孵化する直前の卵が保温されているので、殻の中にあるのはくちばしや羽が付き始めた雛です。ここまで聞いただけで、大方の人は食欲をなくし、直視することも避けたくなります。

このバロット売りをしていたのが、パキート・フランシスコ (39 歳 ) さん。マニラのお隣り、ケソン市に住んでいます。
この商売を始めて 3 年、以前は縫製工場で働いていました。ところが、工場閉鎖であっというまに職を失ってしまい、それで始めたのがバロット売り。
仕事時間は、夕方 6 時から翌日昼ごろまで。そのあと、帰ってひと寝入りしてから、夕方また売りに出ます。
1週間、休日無しの仕事です。

 


「できれば、海外に行って歌手になりたい。得意はバラード」というパキートさん。

 

バロットの値段は 1 個、 10P ペソ。 1 日平均 50 〜 60 個売って、そのうち 40 %が自分の取り分、あとは仕入れ費用やその地域の販売元締めに支払います。 1 日約 200 ペソを順調に稼ぐことができれば、月収は 6000 ペソ。が、これでは 74 歳になる母親を扶養しながら生活していくのは苦しいと言っていました。きょうだい 3 人は結婚しています。
もっとたくさん売って、収入を多くしたい、そのためには籠売りでは限界だといいます。籠に入れられるのはせいぜい 50 個前後。これが手押し車であれば、 150 個は詰めるそうです。


保温鍋の着いた手押し車や小さなスタンド売りのバロット屋を見かけたことがあります。ビジネスとしてはうまくいった形態なのでしょうが、そのように設備投資をしてまで、先行きがわからない伝統のバロット売りに専念するのか。それとも少しでも資金ができるようになったら違う仕事に変わるのか、その辺はパキートさんも定かではない、とみられます。籠ひとつで商売できるような気軽さにのって、なんとか生活を維持していくのに甘んじることを選びつつ、いつかチャンスがあれば、次なる転職を夢見るというのが、彼を含めて大方の庶民の描く仕事のプランのような気がします。


もし、子供がいたら、何より教育を受けさせたい、とパキートさんは思っています。
そして、もし転職するとしたら、海外へ行きたい。歌手になりたい。日本かアメリカ、カナダなどへ行くのが希望です。

バロットの食べ方ですが―
このような食べ方は、中国、ベトナムにあるそうです。マニラを流れるパッシグ川沿いは、 18 世紀に入るまでは中国、マレーシア、インドなどからの船が定期的に寄港し貿易が行われていた歴史があります。その中国商人が定住するうちにバロットの食べ方が伝えられたのではないか、というのです。
バロットに適した卵は殻が厚くて硬く、受精していることが確かなものに限られます。日本の鶏卵を昔そうしたように、電球やロウソクに透かして確かめるのでしょうか。
アヒルの体温 42 ℃に近い状態に保って孵化にもっていきますが、 28 日で孵化するところを、 17 日または 18 日目でバロットとして売りに出されるのです。この間、受精しているが発育のよくないものなどは取り除かれ、ペノイ ( ピノイ ) ・バロットとして売られます。この場合は固ゆで卵のようで、中身は茶色をしているそうです。これだと 1 個 6 ペソと安く、子供たちのおやつによく食べさせるという人もいました。

その夜、バロット売りに話を聞いたあと、いざ食べることになっておそるおそる殻をむいた中身に手を伸ばしたのですが。やはり至近距離でその“姿”を見てしまうと・・・
結局、殻に付いていた黄身のようなもののかけらを口にしただけでした。


籠の中でバロットは保温されている。食べるときは塩やお酢で。

 

友人が教えてくれた正式な食べ方は次のようです。
卵の平らなほうを上にして持ち、軽く叩いてひびを入れる。次に少し殻をむいて出てくる、薄くて白い膜をはがす。ここで、塩を少々入れて、汁をぐいっと飲む。
さらに殻をむいて、今度は雛を食べる、というわけです。
成分としては卵ですから、たんぱく質、ビタミンEなどを多く含んで栄養価が高いため、強壮作用があると一部では、信じられているらしいのです。多くは、手軽な夜食として、あるいは昼間のおやつとしても大人だけでなく、子供にも好かれているようです。

 

 

 

フィリピンの歌姫、レジーン・ベラスケスのコンサートは、会場の1万人近く収容できるコロシアムを7割ほどうめて好評でした。ヒット曲の「 Kailangan Koy's Ikaw(I Need You) 」はじめ数々のラブ・ソングを歌い上げましたが、ちょっと太めかな、と思われるボディを堂々と露出して、歌もパフォーマンスもファンを満足させました。もうひとりの歌姫は、レア・サロンガ(ミュージカル・ミスサイゴンを演じた)。国際的な歌手であり、女優。彼女のコンサートも、本当に美しい歌声で会場を魅了しました。

 

 

 

 

 

 

発信:おおつかともこ

文・写真も)

連絡先: